新入社員の退職代行利用が急増中。5回自力で辞めた世代の私が思うこと

2026年7月16日

2026年の春、こんなニュースが話題になりました。

4月1日の入社式直後から、退職代行サービスに新入社員の依頼が殺到。 ある業者では4月1日からの3日間だけで新入社員から11件、別の業者では半月の依頼678件のうち110件が新入社員──前年の2倍以上だったそうです。

「入社初日に辞めるなんて」と眉をひそめる人も多いでしょう。では、ネットも退職代行もない時代に、5回ぜんぶ自力で「辞めます」を切り出してきた私がどう思っているか。今日はそれを書きます。

まず正直に言う。「辞めます」を言うのは、怖い

退職代行を「甘え」と切り捨てる人は、たぶん忘れているんです。上司に「辞めます」と切り出す瞬間が、どれだけ重いか。

私は5回やりました。慣れることはありませんでした。何日も前から言葉を用意して、タイミングをうかがって、胃を痛くしながら切り出す。引き止められ、ときには怒られ、「裏切るのか」という空気に耐える。あれは何度やっても消耗します。

だから、「その一言が言えなくて、ずるずる消耗し続けている人」の気持ちは分かります。言えないから辞めない、はっきり言えば「言えないせいで逃げ遅れる」──これが一番まずいんです。

夜、スマートフォンを操作する手元

退職代行への、私の結論

先に結論を言います。

自分で言えるなら、自分で言うのが一番いい。でも、言えずに壊れるくらいなら、道具を使って逃げろ。

順番に説明します。

自分で言うのが一番いい理由は、単純にタダで、後腐れが少ないからです。退職は法律で認められた権利で、本来、代行に数万円払う必要はありません。円満に「辞めます」→「分かりました」で済む職場なら、自分で言えばいい。私の5回は全部これで済みました。

それでも道具を使うべき場面は、はっきりあります。

  • 「辞めたい」と言ったら怒鳴られる、脅される、無視されることが目に見えている
  • 過去に言い出した人が執拗に引き止められたり、退職を妨害されたりしているのを見た
  • すでに心や体に症状が出ていて、あの人たちと話すこと自体が無理

こういう職場相手に「自分の口で言うのが筋だ」と正論を言っても意味がありません。まともに取り合わない相手に、まともな手順は通じない。 そのための道具です。

「入社直後に辞めるなんて」への答え

ニュースでは「配属初日に、聞いていた条件と違うと気づいた」という声が紹介されていました。

これ、私は責める気になれません。前にも書きましたが、私が5回転職した理由の多くは「入ってみたら話が違った」です。給料の内訳、拘束時間の実態──入る前に分かる情報が少ない時代は、入ってから気づくしかなかった。

今の子たちは、入社初日に「話が違う」と見抜いて、すぐ行動している。私が数ヶ月〜数年かけてやっていた見切りを、初日にやっているわけです。スピードが上がっただけで、やっていることは同じ。「条件を偽った側」ではなく「見抜いた側」を責めるのは、順番がおかしいと私は思います。

ただし、ひとつだけ先輩として言わせてください。「なんとなく思ってたのと違う」で辞めるのは、次も同じ結果になります。 給料なのか、時間なのか、人なのか──「何が違ったのか」を言葉にしてから動くこと。これは時代が変わっても変わらない、辞め方の鉄則です。

使うなら、これだけは知っておく

退職代行を選ぶときの、実務的な注意です。

  • 相場は2〜5万円程度。 「即日対応」をうたう業者が多い
  • 業者には種類があります。民間業者は「退職の意思を伝える」までが基本。未払い給料や有休の交渉までやれるのは労働組合系や弁護士です。もめそうな職場なら後者を選ぶ
  • 会社への連絡を代行してくれるだけで、退職の権利そのものはあなたが元から持っているもの。堂々としていい
  • 極端に安い業者、実態のよく分からない業者には注意。お金を払う前に運営元を確認する

まとめ:道具が増えたことは、いいことだ

  • 「辞めます」を切り出すのは、いつの時代も重い。言えずに逃げ遅れるのが一番まずい
  • 自分で言えるなら自分で。言えずに壊れるくらいなら道具を使え
  • 「話が違う」に初日で気づいて動くのは、甘えではなくむしろ早い
  • ただし「何が違ったのか」を言葉にしてから動くこと。次の会社選びの物差しになる

ネットも代行もなかった時代から見れば、今は「辞める自由」を支える道具がそろった、いい時代です。そして道具に頼る前にできることもあります。次のあてを先に見つけておくこと。 行き先が決まっている人間は、「辞めます」を言う声も強くなる。転職エージェントで次を探すのも、退職代行と同じ「あなたを守る道具」のひとつです。使えるものは、全部使ってください。


※参考: 社会保険労務士法人T&M Nagoya「入社初日に退職代行」 / HRC「2026年4月前半 新入社員の退職代行急増」