AIに仕事を奪われる時代、ブルーカラーという選択は「あり」なのか。現場を知る人間の本音

2026年7月20日

最近、こんな話をよく聞くようになりました。

「AIに奪われるのはホワイトカラー(デスクワーク)の仕事。現場の仕事はAIには奪えない」

実際、アメリカでは簡単な事務作業や調整業務がAIにどんどん置き換えられて雇用や賃金が下がる一方、現場技能職の価値が上がり、「ブルーカラー・ビリオネア(現場仕事で大金持ち)」なんて言葉まで生まれています。日本でも、配管工や電気工事士といった熟練の現場技能職で高所得者が増えているという調査が出始めました。

じゃあ20代は今から「手に職」の現場仕事を選ぶべきなのか。いろいろな現場の仕事を渡り歩いてきた人間として、きれいごと抜きで答えます。

まず事実確認。「ホワイトカラー消滅」はまだ起きていない

煽り記事に騙されないよう、先に現状を整理します。

  • 日本では、AIによる大量リストラはまだ起きていません。調査では、事務系職種の過半数がそもそも仕事でAIを使ってすらいない、という段階です
  • ただし変化の兆しは出ています。都市銀行などでAI導入を理由にした採用数の抑制が始まり、専門性の低い事務職の賃金の伸びは、すでに平均を下回っています
  • アメリカでは一歩先に進んでいて、若手ホワイトカラーの就職難が現実になりつつあります

つまり「消滅」は嘘だけど、「専門性のない事務仕事から、じわじわ削られていく」は本当。これが2026年時点の正直なところです。

工事現場で電動工具を使う作業員の手元

現場仕事がAIに強いのは、本当です

ここは、現場を知る人間として断言できます。

考えてみてください。AIは文章を書き、計算し、資料を作れます。でも、狭い天井裏に潜って配線を直すこと、現場ごとに違う状況を見て手を動かすことは、できません。ロボットにやらせようにも、現場は一つひとつ条件が違いすぎる。人間の体と判断力のセットは、機械にとって一番置き換えにくいものなんです。

しかも日本の現場は、AI以前から深刻な人手不足です。職人の高齢化で、若い働き手の価値は上がり続けている。「AIに強い」×「人が足りない」の掛け算で、現場技能職の待遇が上がっているのは自然な流れです。

ただし、現場のリアルも知っておけ

ここからが、経験者にしか言えない部分です。現場仕事は天国ではありません。

  • 体はきつい。 夏は暑く、冬は寒い。若いうちは平気でも、体が資本である以上、ケガや年齢の影響をデスクワークより直接受けます
  • そして、これが一番大事なのですが──現場仕事なら自動的に稼げるわけではない。 私自身、給料が安くて拘束時間の長い職場をいくつも経験しました。「手に職」があっても、待遇の悪い会社にいれば安いままです
  • 高収入になっているのは、資格を持った熟練者や、儲かる仕組みを持つ会社にいる人、独立した人です。「現場に行けば誰でも高給」ではありません

つまりこうです。「ブルーカラーはあり」。ただし勝敗を分けるのは職種ではなく、①資格・技能と、②どの会社に入るか。 これは私がこのブログでずっと書いてきたこと──「給料は場所で決まる」──と同じ結論に戻ってきます。

20代が現実的に考えるなら、こうなる

今デスクワークで、仕事がAIに食われそうだと感じている人へ。 焦って全部を捨てる必要はありません。ただ「誰でもできる事務作業」だけで食べている状態は、数字の上でもすでに不利になり始めています。専門性を足すか、場所を変えるか、考え始めるなら早い方がいい。

現場仕事に興味がある人へ。 狙い目は「資格が武器になる職種」です。電気工事士のような国家資格が要る仕事は、資格そのものが参入障壁になって、AIにも新規参入者にも脅かされにくい。未経験からでも、資格取得を支援してくれる会社があります。

そして、どちらの道でも共通の鉄則がこれです。

職種を選んだら、次は会社を選べ。 同じ仕事でも、会社によって給料も拘束時間もまるで違う──これは私が5回の転職で体で覚えたことです。「現場は将来性がある」という話に乗るとしても、待遇の悪い会社に入ったら意味がありません。求人サイトやエージェントで、その職種の給料の相場と、会社ごとの条件の差を必ず比べてください。

まとめ:「あり」。ただし夢物語ではなく、戦略として

  • ホワイトカラー消滅はまだ嘘。でも専門性のない事務仕事から削られ始めているのは本当
  • 現場仕事がAIに強いのも本当。人手不足で価値は上がっている
  • ただし現場は天国ではない。稼げるかどうかは資格と会社選びで決まる
  • 「AIに強い職種」を選んでも、「待遇のいい会社」を選ばなければ意味がない

時代がどう変わっても、最後の結論はいつも同じところに来ます。あなたの値段は、職種と場所の掛け算で決まる。 AIの時代は、その「職種」の部分の相場が動き始めた時代です。相場が動くときは、早く動いた人が得をする──雑誌で職探しをしていた時代から、それだけは変わっていません。


※参考: リクルートワークス研究所「AIはホワイトカラーの仕事を奪う?」 / nippon.com「ブルーカラーの給与が伸びる」 / MIT Tech Review「ホワイトカラー消滅、まだデータに兆候なし」